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千葉地方裁判所 平成9年(ワ)804号 判決 1997年11月28日

呼称

原告

氏名又は名称

新勝寺

住所又は居所

千葉県成田市成田一番地の一

代理人弁護士

藤林律夫

代理人弁護士

尾崎達夫

代理人弁護士

鎌田智

代理人弁護士

伊藤浩一

代理人弁護士

金子稔

呼称

被告

氏名又は名称

株式会社成田山ペット友の会

住所又は居所

千葉県市川市八幡二丁目一三番六号

主文

一  被告は、千葉地方法務局市川支局平成八年二月一日受付をもってした被告の設立登記のうち、「株式会社成田山ペット友の会」の商号の「成田山」部分の抹消登記手続をせよ。

二  被告は、その営業上の施設又は活動について、「成田山」の表示を使用してはならない。

三  被告は、本店事務所、成田市芦田字内野一一九七番地所在の営業施設、その営業活動にかかる車両、被告の宣伝用ちらし及びパンフレットから「成田山」の表示を抹消せよ。

四  訴訟費用は被告の負担とする。

五  この判決は主文第二、第三項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

主文同旨。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、弘法大師敬刻の不動明王を本尊として奉安し、真言宗の教義に基づいて不動明王の本誓を宣揚するため、その教旨をひろめ、儀式行事を行い、信者を教化育成し、その他真言宗の大本山としてこの寺院の目的を達成するための業務及び事業を行うことを目的とする宗教法人である。

2  原告は、天慶三年(九四〇年)の開壇後、元禄年間に現在の成田市に移建され、真言宗智山派の大本山として一般には「成田山新勝寺」若しくは単に「成田山」という山号で全国的に広く認識されている。

3  被告は、平成八年二月一日、千葉地方法務局市川支局において設立登記された、本店を肩書地とする資本金一〇〇〇万円の株式会社で、ペット霊園の企画・設計・施工、ペットの墓所・墓地・墓碑及び祭祀器具の販売及び賃貸、ペット火葬場及び納骨堂の経営等を事業目的とし、その本店所在地に納骨堂をおいて主たる営業を行うとともに、原告所在地から約五キロメートルしか離れていない成田市芦田字内野一一九七番地において約五〇〇〇坪・日本最大規模一万二〇〇〇基を公称するペット霊園を開設している。

4  被告は、右営業につき、「株式会社成田山ペット友の会」という商号を使用し、その本店事務所及びその営業に使用している車両にその商号の表示を付している。

また、被告は、平成八年六月ころから、「成田山ペット霊園」と題した宣伝チラシを新聞折り込み広告として成田市内に頒布し、本店事務所の店頭には、火葬料金、霊園、納骨堂料金等の案内で、「日本一の聖地である成田山の地に五〇〇〇坪の広大なペット霊園を設置しました」との記載がある「Memorial」と題するパンフレットを置いている。

5  右のとおり、被告は、その商号に全国的に著名な「成田山」という原告の山号を冠し、原告の所在地である成田市に「成田山ペット霊園」なる施設を設置するなどして、原告と類似の名称を使って営業を行っている。

6  そのため、被告の営業が原告によって行われているか、若しくは原告と被告との間に経済的又は組織的に何らかの関係があると一般人に誤認混同されるおそれがある。

実際に被告の営業に関し、原告のところに問い合わせがあった事実もある。

したがって、被告の行為は、不正競争防止法二条一項二号若しくは一号に該当する。

そして、被告のこれらの行為によって、原告がペット霊園まで経営しているかのような誤解を一般人に生ぜしめ、原告の営業上の利益が侵害され又はそのおそれがある。

7  よって、原告は、被告に対し、不正競争防止法三条に基づき、前記被告の設立登記のうち、「株式会社成田山ペット友の会」の商号の「成田山」部分の抹消登記手続をし、その営業上の施設又は活動について、「成田山」の表示の使用の差し止め、本店事務所、成田市芦田字内野一一九七番地所在の営業施設、その営業活動にかかる車両、被告の宣伝用ちらし及びパンフレットから「成田山」の表示の抹消をすることを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の事実は争う。

2  同3、4の事実は認める。

3  同5、6の事実は争う。

4  同7の主張は争う。

第三  証拠 本件訴訟記録中の書証目録の記載を引用する。

理由

一  甲第五、第六号証、第一九号証の一ないし三及び弁論の全趣旨によれば、請求原因1、2の事実を認めることができる。

請求原因3、4の事実は、当事者間に争いがない。

二  前記事実に、甲第六号証、第八ないし第一八号証、第一九号証の一ないし三及び弁論の全趣旨によれば、原告は、真言宗智山派の大本山として一般には「成田山新勝寺」若しくは単に「成田山」という山号で全国的に広く認識されており、特許庁からは、昭和四四年四月二三日付で第二八類「成田山」の指定文字(登録番号第八一四九〇三号)につき商標登録を受けたのを初めとして、「成田山」の文字について数種類の商標登録を受けていること、被告が成田市に「成田山ペット霊園」なる施設を設置するなどして、原告と類似の名称を使って営業を行っているため、被告の営業が原告によって行われているか、若しくは原告と被告との間に経済的又は組織的に何らかの関係があると一般人に誤認混同されるおそれがあり、実際に被告の営業に関し、原告のところに問い合わせがあったこと、以上の事実を認めることができる。

三  右一、二で認定の事実によれば、被告の行為は、「成田山」として一般に広く認識されている原告の山号(商品等表示)と同一若しくは類似の商品等表示である「株式会社成田山ペット友の会」、「成田山ペット霊園」を使用して、他人である原告の営業と混同を生じさせる行為、さらには、自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示である原告の山号「成田山」(商品等表示)と同一若しくは類似のもの(「株式会社成田山ペット友の会」、「成田山ペット霊園」)を使用する行為に該当するというべきである。

そして、前記認定事実によれば、原告は、被告の右不正競争行為により営業上の利益が侵害され又はそのおそれがあるものと認めることができる。

四  以上によれば、原告の本訴請求は、いずれも理由があるのでこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 桐ヶ谷敬三)

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